10月9日の東京公演に向けた事前講座「復曲能〈和田酒盛〉と中世の女性たちの生き方」を8月20日(土)、品川区の池田山舞台で開催しました。残暑の厳しい日となりましたが、定員の約40名のお客様にご来場いただきました。誠にありがとうございました。
ゲスト講師に日本中世史、女性史がご専門で、女子美術大学付属高等学校・中学校の教諭でいらっしゃる野村育世先生をお迎えしました。
野村先生のお話のタイトルは「中世に生きるヒロインたちとその背景」。中世において男性と女性がどのような存在であったのか、出家の世界、静御前と北条政子の友情、中世の遊女のあり方、そして〈和田酒盛〉のヒロインであり、曽我十郎の恋人、遊女でもある虎御前についても取り上げていただきました。当時の男女のあり方のイメージを変える大変興味深い視点を示していただきました。
静御前のお話に関連して能〈二人静〉の仕舞、江口の遊女に関連して能〈江口〉の仕舞もご覧いただきました。
後半は東京公演で上演する絵巻物のように華やかな復曲能〈和田酒盛〉の見どころのひとつ「思い差し」の場面をご覧いただきました。「思い差し」とは、自分が飲んだ盃で想う人に酒を差す余興のこと。当時の権力者・和田義盛が主催する大宴会の場面で、虎御前は和田義盛に差すという周囲の期待を裏切り、自分の想いを貫いて十郎に盃を差します。そして十郎もそれを受ける。この名場面をお楽しみいただきました。
講座ではご紹介できませんでしたが、虎御前の思い差しで使われた盃は「和田盃」と呼ばれました。昨年のツイートでご紹介しておりますのでぜひご覧ください。
12月11日の〈復曲能を観る会〉で上演する「和田酒盛」。酒宴で大勢の鎌倉武将が見守る中、遊女・虎御前は自分の気持ちを偽ることなく、父の仇討を目前にした曽我十郎に思い差しの盃を渡します。この盃は #和田盃 と呼ばれ、江戸時代には写しも作られて大名間で贈答にも使われました。#曽我物語 pic.twitter.com/TXHs7Zot4D
— 奥津健太郎 (@okutsukentaro) November 6, 2021
9月は11日(日)に虎御前の謡跡めぐり(神奈川県大磯)、19日(祝/月)に横浜能楽堂第2舞台で第4回事前講座を開催いたします。どちらもご予約受付中です。詳細はページ下の「講座・ワークショップ」をご覧ください。
追加
野村先生のお話に関連して、9月から渋谷区立松濤美術館で以下の展覧会も始まります。
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