復曲能を観る会とは/メンバー紹介

〈復曲能を観る会〉にご関心をお寄せいただき誠にありがとうございます。

能楽師の、加藤眞悟、長谷川晴彦、古室知也、奥津健太郎の4名が集い、本会を立ち上げた経緯や考え方につきまして、少し長くなりますがぜひお読みください。


人間は古来、人と人の深いつながりの中で生きてきました。現代は情報化が高度に発達し、顔の見えない仮想空間でのやりとりが激増しています。そのうえ、コロナ禍にあっては人間関係の大きな変化も強いられ、精神的なより所が失われた結果、多くの人々が不安を抱えながら生活する経験もありました。「絆」「結」という言葉も注目される今、私たちは伝統芸能の力をもっと現代に生かしたいと考えています。


◆能と狂言の力で人と人の想いをつなぎたい

能狂言は700年の長い間演じ続けられてきた世界でも稀な芸能です。これほど長い間変わることなく愛され続けた理由は、能と狂言に人と人の想いをつなぐ力があるからだと考えています。舞台には年齢や身分、性別に関わらず多くの登場人物が現れ、人間誰しもが持っている悩みや苦しみ、怒り、そして喜びを語り、観客と共鳴します。時や場所を超え、人と人をつなげることのできる能狂言の力を現代に生かしたいと私たちは願っています。


◆復曲は埋もれた文化遺産の発掘

能は、室町~江戸時代に作られた演目が200あまり今に伝わっています。能と狂言は江戸幕府の儀式芸能だったため、現在演じられている演目・演出は高度に洗練され、江戸時代の権力者の好みが反映されています。一方、今は演じられなくなった草創期の室町時代の演目の中には、人情味あふれる広く庶民に愛された演目が数多くあります。そのような、現代に上演する価値の高い演目をよみがえらせることを「復曲」といいます。私たちが目指している復曲活動は、埋もれた貴重な文化遺産の発掘です。


「能と狂言の力で人と人をつなぎたい」「復曲は埋もれた文化遺産の発掘」

このふたつの言葉を柱に、復曲能の公演活動を通じて古人が大切にしてきた文化を再認識し、生きている伝統芸能を未来に繋げたいと願って、能楽師の、加藤眞悟、長谷川晴彦、古室知也、奥津健太郎が集い、2021年5月に任意団体を設立しました。2022年3月には「一般社団法人 復曲能を観る会」に改組し、継続的・発展的な活動の地盤が固まりました。2022年は10月の東京公演、11月の名古屋公演を中心に講座や謡跡めぐりなども開催し、能狂言を様々な角度からお楽しみいただきました。2023年も東京公演と名古屋公演を軸に様々な活動をして参ります。今後の活動にもぜひご期待ください。


メンバーご紹介

加藤 眞悟(かとう しんご)

一般社団法人 復曲能を観る会 代表理事

能楽師シテ方観世流 重要無形文化財(能楽)総合認定保持者(日本能楽会会員)

昭和33年生まれ。故二世梅若万三郎及び三世万三郎に師事。室町時代より能楽継承の梅若家、その初世万三郎は能楽界初の文化勲章受章者。平成11年より「加藤眞悟明之會」を国立能楽堂で毎年5月5日に開催。これまで室町時代の能〈真田〉(源平盛衰記)、〈伏木曽我〉〈虎送〉〈和田酒盛〉(曽我物語)の復曲を手がける。主な披キ〈木賊〉〈鷺〉〈卒都婆小町〉〈砧〉


長谷川 晴彦(はせがわ はるひこ)

一般社団法人 復曲能を観る会 理事

能楽師シテ方観世流 重要無形文化財(能楽)総合認定保持者(日本能楽会会員)

昭和44年静岡県掛川市生まれ。大学在学中に三世・梅若万三郎に師事。梅若万三郎一門による梅若研能会のメンバーとして、東京を中心とした国内、海外での能公演に出演。自主能公演「泰晴会」を催すほか、門下の素人会「晴々会」、能普及講座としての「掛川 能楽の集い」、子供の能体験講座「小田原こども能楽クラブ」などを開催し、能楽普及にも努めている。


古室 知也(こむろ ともや)

一般社団法人 復曲能を観る会 理事

能楽師シテ方観世流 重要無形文化財(能楽)総合認定保持者(日本能楽会会員)

昭和46年生まれ。三世梅若万三郎に師事。公益財団法人梅若研能会評議員。平成4年梅若万三郎家入門、平成12年〈経正〉にて初シテ以降、千葉県、東京都など関東近郊で能の普及に努め、曽我物語ゆかりの地・伊東で伊東市文化財史蹟保存会主催の「伊東子どもお能教室」の講師として、能を通じて郷土愛を育む活動の指導にあたっている。


奥津 健太郎(おくつ けんたろう)

一般社団法人 復曲能を観る会 理事

能楽師狂言方和泉流 重要無形文化財(能楽)総合認定保持者(日本能楽会会員)

昭和47年生まれ。故十三世野村又三郎信廣に師事。狂言の家として400年の歴史がある野村又三郎家の門下として日々の舞台を勤める。東京藝術大学音楽学部邦楽科(能楽・狂言専攻)卒業。在学時には野村萬、野村万作両師(ともに人間国宝)の指導を受ける。舞台に加え、狂言講座やワークショップなどの普及活動や、芸能による国際交流にも努めている。