2025年新春、名古屋公演〈熱田龍神〉について

【名古屋公演演目解説】


復曲能〈熱田龍神〉

空海(ワキ)が入唐渡天成就御礼に熱田神宮を訪れた時、神主(前シテ)から当社の御剱宝神を沙門が盗み出した故事により入所禁制と止められる。しかし空海の上に紫雲たなびき大和武尊の代よりの教え、当社と弘法は一体分身との御声ありて、空海は神前にて夏の庵居を結ぶ。

すると、尊き沙門に受戒を望む女(前ツレ)が現れる。空海に名を尋ねられると女は語り出し、空海が勅命により神泉苑で降雨の法を行い、善女竜王を勧請すると、その龍は八龍と姿を変え大雨を降らせた。その後当社へ飛来し、鬼門の竜仙寺の池に移り住み、実相をみせるが池の中に隠れてしまう。すると末社ノ神(アイ)現れ、熱田の宮の門の謂れ、草薙の剣の故事を語る。やがて龍神が池上に出現し宝珠を空海へ授け、空海はその宝珠を神前に納める。龍神は蓬莱山の不二の薬を四方へ施し、海底に飛んで入る。

熱田神宮には空海お手植えと伝えられる大楠がご神木として祀られている。


狂言〈節分〉

ある年の節分の夜(現在の大晦日)、夫が出雲大社へ年神様を迎えるために年籠りに出かけ、妻がひとりで留守番をしているところに、隠れ蓑・隠れ笠を着た鬼が遥々蓬莱の島(古代中国で東方の海上にあるとされた仙境)からやって来ますが、鬼は留守居の女を一目見て心を奪われ、小歌を謡い舞を舞って気を引こうとしますが、夫がある身の女は全く相手にしないため鬼はついに泣き出し、それを見た女は「そこまで言うならば」と条件をつけ、靡く気色を見せますが・・・。

基本的には「懸想する男とその心に応えるか否か」という、古今東西の物語に見受けられる筋立てながら、一方の恋をする側を追儺の邪鬼と年神様の両方の性質を兼ね備えた蓬莱の鬼とする事や、それを手玉に取ろうとする女との駆け引きを、中世〜近世に流行した歌謡を取り入れた小歌を用いる事で猥雑さを薄めており、見どころ、聴きどころの多い名作の狂言です。

新春に相応しい〈節分〉をお楽しみください。


仕舞〈小鍛冶 クセ〉

一条帝の勅命で御剣を打つことになった小鍛冶宗近。眼前に現れた童子(シテ)は、草薙の剣の物語を聞かせると、相鎚を勤めることを約束し、姿を消す。三種の神器の一つである草薙の剣は、熱田神宮に御神体として奉斎されています。


仕舞〈小鍛冶 キリ〉

小鍛冶宗近がお告げに従い刀を打つ準備を整えると、稲荷明神の使いの狐(シテ)が現れ、

相鎚を勤めて名剣を打ち上げ勅使に捧げるのでした。


仕舞〈楊貴妃〉

亡き楊貴妃の魂魄の探索を玄宗皇帝に命じられた方士。神仙の術により、常世の国の蓬莱宮で出会った楊貴妃(シテ)は、玄宗との恋物語を語るのだった。蓬莱は熱田で、楊貴妃は熱田大神の化身であったという伝説があります。


仕舞〈春日龍神〉

仏法を極めるため日本を出て入唐渡天しようとする明恵上人は春日明神の使者に、春日こそ真の霊地と告げられ入唐を止めると、龍神(シテ)が現れ釈迦の誕生から入滅までを見せるのでした。


独吟〈不逢森〉

鎌倉から都へ商いに出たもの長年帰らぬ商人。父探しの旅に出た商人の娘は体調を崩し尾張国萱津宿で落命してしまう。帰郷のため萱津宿に居た父は、萱津の森の僧と共に、煙の中に亡き者の姿を映す反魂香を焚くのだった。〈不逢森〉は復曲能を観る会が復曲した名古屋に所縁の演目です。

一般社団法人 復曲能を観る会

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